社会医療法人財団 池友会 新小文字病院 福岡県北九州市門司区大里新町2-5 TEL:093-391-1001 新小文字病院は日本医療機能評価機構認定病院です

診療基本指針

(原則)
1. (医師の責任)医師の医療上の判断は命令や強制ではなく、自らの知識と良心に基づく。したがって、医師の医療における言葉と行動には常に個人的責任を伴う。
2. (医療の質の向上)新小文字病院は時代時代の最良の医療を提供することを自らに課している。とくに、入院診療は病院における医療活動の根幹であり、入院診療の質を高く維持するために不断の努力が求められる。
3. (患者の権利と健康の尊重)診療に際し、患者の権利を損なうことのないよう細心の注意を払わなければならない。患者の人格を尊重し、患者の個人の秘密を守り、患者の健康と安全を全てに優先させなければならない。
4. (診療行為とその正当化の手続き)医療は個々の診療行為とそれを正当なものにする手続きからなる。診療行為正当化の手続きとは、診療行為実施の前に、適切な手順で適切な内容の説明を行ない合意を得ること、また、実施後、結果と診療行為を通して得られた情報を患者に伝達して理解を得ることからなる。。
5. (医療の不確実性)医療はしばしば身体に対する侵襲を伴う。人間の生命の複雑性と有限性、及び、各個人の多様性ゆえに、医療は本質的に不確実である。医療が有害になりうること、医療にできることには限界があることを常に自覚して謙虚な態度で診療にあたる。
6. (医療事故への対応)医療の安全性を高めるために最大限の努力をしても、医療事故は常に発生する可能性がある。発生した場合には責任を回避せずに誠実に対応する。決して虚偽の説明や、診療録への虚偽の記載をしてはならない。
(緊急時の対応)
7.  一人の患者に対し、当該診療単位の部長(あるいは部長に準ずる医師)、主治医、担当医のチームが診療を担当する。チームとしての意思決定の過程が、医療の質と安全を高めるのに不可欠であるとの理由により、単独での入院診療は原則として行わない。
8.  入院診療を担当する診療単位の部長(あるいは部長に準ずる医師)は、少なくとも週1回の管理者回診を行ない、当該診療単位の全入院患者について、個々の医師の診療状況を把握し、助言・指導する。
9.  主治医とは、患者の診療に主たる責任を有する医師を指す。
10. 担当医とは、主治医の指示と指導の下、主治医の診療を補佐、あるいは自ら診療を実施する医師を指す。
11. 研修医が担当医として診療に参加する場合には、常に、指導医、及び、上級医の指導の下に診療行為を行なうものとする。
12. 主治医、担当医は毎日担当患者を診察して病状を把握し、所見を速やかに診療録に記載する。また、患者の要望、訴えを聞き、これに誠実に応える。
13. 部長(あるいは部長に準ずる医師)は主治医を兼任できる。
14. 主治医資格は各診療科の学会の専門医あるいは認定医の資格を有するか、あるいは、同等の診療能力があることを条件とし、当該診療単位の部長(あるいは、部長に準ずる医師)が認定する。
15. 主治医資格のある医師同士がチームを組んで、患者毎に主治医、担当医を異にしてもよい。ただし、患者ごとの主治医(責任者)は1名とする。
16. チーム編成は部長(あるいは部長に準ずる医師)が定める。
(診療チームの構成と任務)
17. 部長(あるいは部長に準ずる医師)、主治医、担当医は可能な限り連絡先を明らかにしておく。
18. 主治医、担当医は、深夜、休日を問わず、緊急時には病棟看護師からの連絡を受け、必要に応じて出勤し、診療にあたらなければならない。
19. 部長(あるいは部長に準ずる医師)は、深夜、休日を問わず、当該診療単位の主治医、担当医の連絡を受け、必要に応じて出勤し、診療を指導、監督、あるいは担当しなければならない。
20. 主治医、担当医が何らかの理由で緊急の対応ができない場合、当該診療科の他の医師は自分が主治医、担当医でなくても、病棟看護師の連絡を受け、必要に応じて診療を担当しなければならない。
(コメディカルとの協調)
21. 質の高い医療を提供するためには、コメディカルとの良好な協力関係が不可欠である。関連職種各職員の自発的努力が医療の質を高める。このためにも、協力にあたっては互いの人格を尊重しなければならない。
22. 病棟での診療内容の指示は所定の手順にしたがい正確に伝達する。
23. 看護師を含めたコメディカルから、入院患者の診療の要請があった場合には、速やかに診療し、その結果をコメディカルに伝える。
24. 普段より看護師を含めたコメディカルと、診療内容や患者の反応について円滑な意思疎通に努める。特に、コメディカル側に診療内容に疑問があった場合、積極的に医師に伝えることを奨励し要請する。診療内容によってはコメディカルが法的責任を問われることがありうるので、疑問には誠実に答える義務がある。こうした意思疎通の努力が医療の質の向上につながる。
(記録)
25. 主治医、担当医は入院診療録に主訴、既往歴、家族歴、現病歴、身体所見、検査所見等を、患者、家族等へ開示されることに留意し、読みやすい字体で記録する。略語での記載は可能な限り避け、理解しやすく、誤解の生じにくい言葉を使用する。さらに、画像診断や検査値の解釈、診療方針、診療経過、カンファレンスでの議論の概要を記載する。また、説明文書、同意書、手術記載、麻酔記録、検査結果等必要な書類を作成あるいはファイルする。また、退院後、2週間以内に退院要約を作成して診療録を完成させる。
26. 頻度の高い疾患に対する特定の診療を円滑にすすめるためにクリティカルパスが使用されている。院内で承認を受けたクリティカルパスを使用する場合、クリティカルパスに含まれる診療内容、想定内の経過等、前項の記録すべき内容の一部はクリティカルパスで代用できる。
27. 個々の診療行為の記録は、診療行為の担当者(手術記録ならば術者、麻酔記録ならば麻酔医、内視鏡検査ならば検査実施医等)が責任をもって記載する。
28. 診療録に記載した場合、記載者はその都度署名しなければならない。
(診療方針の決定と変更)
29. 部長(あるいは部長に準ずる医師)は少なくとも週1回カンファレンスを開催し、管理下にある全患者の診療の基本方針を討議に付す。診療方針の決定は当該診療単位の全員一致を原則とする。カンファレンスでは既往歴、現病歴、身体所見、検査値、画像診断等から、患者の病像を再構成する。これに、過去の文献上の証拠、患者の社会的背景、意思等を加え、合理的議論によって診療方針を決定する。特定の医師の恣意や、科学的裏付けのない権威を診療方針決定の根拠としない。
30. 特に手術については手術前にカンファレンスで病態、全身状態を根拠となる画像診断、検査データと共に提示し、手術方法、麻酔方法が適切か再確認する。
31. カンファレンスには看護師、あるいは、必要に応じて他の職種の代表者にも出席を要請する。方針決定に際し、看護師、あるいは関連職種の担当者の意見を聞く。同時に方針決定の経緯をその職種の他の関係者にも伝達するよう要請する。
33. 医師は予定された診療行為が適切でないと判断した場合、カンファレンスでその旨表明し、合理的議論で適否を検討しなければならない。
34. 深刻な意見の対立が合理的議論で解消されない場合、新小文字病院のすべての医師は個別に調査委員会に調査検討を要請することができる。また、調査申請の行動そのものを理由に人事上、不利な扱いを受けることはない。
35. 主治医、担当医は入院患者の経過、画像診断、検査値を経時的に検討して、病像を確認あるいは修正する。重要な変化があった場合や、再構成した病像を変更せざるを得ない場合は、カンファレンスで、時間的猶予のない場合は部長(あるいは部長に準ずる医師)に直接報告して、その後の診療方針を議論し、必要があれば変更する。
36. 主治医、担当医は診療方針と診療予定を患者に伝える。診療方針が変更された場合には変更理由と変更後の方針を説明する。検査、投薬についても、その開始前に概要を説明する。
37. 主治医、担当医は自分の専門外の医学的判断が必要な場合には、適切な他の診療科の医師の判断をもとめなければならない。
38. 部長(あるいは部長に準ずる医師)は必要に応じて複数の診療科による診療方針検討のための会議を召集できる。
39. 外来、入院を問わず、複数の専門診療科に亘る診療を必要とする場合には、複数の診療科の専門医にコンサルトし協議した上で治療の優先順位や治療方針、主治医を決定する。
40. 外来時と入院時で主治医が異なる場合は、相互に情報を交換しながら治療にあたらなければならない。
(入院と退院)
41. 病歴や所見、検査結果を元に病状を評価し入院決定とする。さらに入院時には明確な入院目的(基本方針)を設定し、入院診療計画書に記載する。これを患者に説明し、同意を得る。
42. 退院時には入院中の診療の結果と得られた情報を患者に説明する。また、紹介医にも入院経過を報告する。さらに、退院後の療養方針と計画を検討し、これを患者あるいは代理人に伝え、あるいは相談を受ける。また、必要に応じて、連携施設や地域の介護サービスと連絡をとり、退院後の療養継続を円滑に進める。
(説明と同意)
43. 患者は自身の病状について説明を受ける権利を有している。医師は患者、あるいは患者の代理人に対し、患者の病状、診療計画、治療内容、検査の結果等を適宜説明しなければならない。また、その行為を診療録に記載する。尚、絵図や模型を活用することは推奨されるが、説明書等を渡し後で目を通してもらう様な方法は不適切である。
44. 説明は当該診療を直接担当する医師が患者本人に説明して同意あるいは理解を得ることを原則とする。ただし、小児や知的障害、精神的問題を有する患者などで、同意に必要な能力がないと判断される場合、あるいは、説明が本人にとって有害と判断される場合には、本人の理解力や状況に応じた説明をする。別に、親権者、後見人に十分に説明して同意あるいは理解を得る。
45. 病状の説明に際しては、事実と推測を区別する。根拠のない推測は避け、わからないことはわからないと率直に説明する。
46. 侵襲を伴う診療行為(手術、検査等)を実施する場合には、病状の説明に加えて、当該診療が必要な理由、診療の具体的内容、予想される身体障害と合併症、実施しない場合に予想される結果、他の手段とその利害得失、実施後の一般的経過等を説明し、同意を得なければならない。また、説明内容と同意の記録を残さなければならない。ただし、緊急事態で同意を得ている時間的猶予がない場合に限り説明を省略できる。
47. 重要な説明には、看護師等医師と異なる立場の医療関係者が立ち会うことが望ましい。また、患者の同意の得られる場合は、患者が信頼する家族あるいは親族の同席が望ましい。
48. 重要な説明は、静かで落ち着いた、外部からみられず、音声が外部にもれない部屋で対面して行なうことが望ましい。
49. 重要な説明では、説明文書をあらかじめ渡して、理解の向上を図ると共に、患者に説明文書中の不明点、疑問点を前もって確認することを要請する。不明点、疑問点があれば説明に際し、重点的に説明して、理解の向上を図る。
50. 重要な説明では、説明中には節目ごとに、また、説明終了時にも、理解できないことがないか確認し、質問を受ける。理解できていないと思われる場合には立ち会いの看護師等に医師と異なる視点からの補助を求めるなど、理解を得るための努力を惜しまない。必要な場合、説明の機会を複数回設けて理解の徹底を図る。
51. 説明直後に同意書への署名を求めることは極力避ける。別の場所で家族あるいは知人と十分相談できるよう配慮する。
52. 治癒の可能性が低い場合等、患者の心理的ストレスが大きい場合には、説明後、患者と密に接触して、反応を確認し、あるいは、ストレスの軽減を図る。また、説明に同席した看護師にも、医師と異なる立場で接触することを依頼し、患者の精神的状況の把握に努める。必要な場合には臨床心理士あるいは精神科医などに援助を仰ぐ。
53. 同意書に署名を求める場合は、他の医療機関の医師の意見(セカンド・オピニオン)を聞くことが可能であること、その際には必要な資料を提供することを伝える。
54. 経験の少ない診療行為を実施する際には、その旨患者に説明し、準備状況についても説明する。患者が希望すれば経験の豊富な医療機関に紹介する。
55. 新小文字病院で実施していない診療行為でも、他の医療機関で相当程度実施されているものについては説明しなければならない。また、希望があれば適切な医療機関に紹介する。
56. 説明と同意に際し、患者・家族に対して要望がないかをこちら側からも確認し、要望が挙がった際は、それに極力対応するように尽力する。
(患者の自己決定権の限界)
57. 患者の希望があっても、当該診療科に経験がなく、かつ、十分な準備のない診療は、原則として行なってはならない。
58. 患者の希望があっても、倫理や法律に反する行動をとってはならない。
59. 患者の希望があっても、医学上適切と思われない診療行為は実施しない。
60. 適切でない診療行為は、他の医療機関で行なうとしても、その実施に承認を与えたり、実施の援助をしない。
(死亡時の対応)
61. 患者が死亡した場合、患者家族は死因の説明を受ける権利を有する。医師は可能な限り説明しなければならない。生前の臨床情報で死因が十分に説明できない場合は、病理解剖を提案し、死因解明の努力をする。
62. 不審死あるいは死体に異状があると認めた場合、24時間以内に所轄警察署に連絡し、死因の解明を警察、司法にゆだねる。
63. 医療過誤や医療事故による死亡の可能性が否定できない場合には、事務長を通じて病院長に連絡し、死因解明の手段について判断を仰ぐ。
(医療事故)
64. 医師は医療事故防止のために常に患者の安全に留意して行動する。
65. 医療事故防止のための各種マニュアル(新小文字病院医療事故防止マニュアル、ならびに、誤認防止、情報伝達エラー防止、患者の反応の観察等に関する各種マニュアル)を遵守する。
66. インシデント、オカレンスがあれば所定の手順で報告し、病院の安全対策の資料として役立てる。同時に、事故防止のための対策を各部署でも独自に考える。
67. 医療事故発生時には「新小文字病院医療事故防止マニュアル」中の「医療事故防止システムと発生時の対応」、従って誠実な態度で誠意ある対応をする。まず、現場の医師は患者の安全のための緊急処置を講じ、ついで当該診療単位の部長(あるいは部長に準ずる医師)に報告して指示を仰ぐ。部長(あるいは部長に準ずる医師)は緊急処置以後の医学的処置を主治医、担当医と検討する。さらに、事務長に連絡し、病院長、医療安全管理者、医療安全総括者に報告する。これら関係者と以後の対応を協議し、適切に対処する。
68. 協議すべき対応には、事実経過を可能な限り正確に把握し記載すること、原因究明の努力を尽くすこと、患者・家族に事故の経過、原因を誠実に伝えること、報告書を作成すること、必要に応じて補償のための対応をとること、事故の性質と重要性に応じて、関係官庁に報告することやマスコミに公表することが含まれる。
(緩和ケア)
69. 疼痛を含め、患者にとって不快な症状や精神的苦痛の緩和に努める。特に、疼痛については、「疼痛緩和マニュアル」を参考にして系統的に対処する。
70. 治癒を望めない患者、死期の近い患者には、精神的にも肉体的にも、可能な限り快適に、かつ、人間としての尊厳を保ちつつ過ごせるよう配慮する。
(診療指針、患者データベース、成績評価)
71. 各診療単位は扱っている主要な疾患について診療指針を明文化する。過去の当該科での成績、文献上の証拠を材料に、構成員による合理的議論を通じて指針を決定する。明文化することにより議論や批判がしやすくなる。治療方法の統一性が保たれ、成績の評価が容易になる。ただし、診療指針で定められた診療行為は、あくまで選択肢の一つであり、他の選択肢を提示せずに指針を患者に押し付けてはならない。
72. 診療指針は大きな問題がない限り一定期間変更しない。適当な時期に成績をまとめて評価する。評価とその時点での文献の検討から、次の診療指針を作成する。
73. 各診療単位の主たる診療対象となっている疾患については、患者データベースを作成する。
74. 主要な疾患の治療成績、多数実施している手術や検査の成績を指標(悪性腫瘍の生存率、血管開存率、術後合併症の頻度、検査の正診率、検査に伴う合併症の頻度等)を決めて評価し、質の改善に役立てる。
(情報の収集と共有の努力)
75. 医療は日々変化し続けている。医療の質を高く保つために、扱っている主要な疾患について、常に系統的に情報を収集する。また、収集した重要な情報は診療単位の構成員で共有するよう努める。具体的には学会で得られた重要情報をカンファレンスで報告し共有を図る。また、抄読会等で医学雑誌に発表された情報を系統的に収集する。大半の医学情報は英語で発信されているので、英文情報の収集を含むことが望ましい。また、こうした情報収集の記録を残す。
76. 個々の患者で問題が発生した場合、その問題の解決法を考えるにあたり、過去の文献を検索する。また、こうした情報をカンファレンスの場で提示し、当該診療単位の構成員で共有を図る。また、こうした情報収集の記録を残す。
(診療成績の発信)
77. 各診療単位での重要な疾患については、学会、専門雑誌等に診療内容、成績を発表することで、医療の進歩に寄与するとともに、批判可能性を担保しなければならない。
78. 新しい診療技術を採用したり、示唆に富む症例を経験した場合には、学会、専門雑誌に発表することで、医療の進歩に寄与するとともに、批判可能性を担保しなければならない。
以上
2006.8.18作成
2015.7.2 一部改訂
2016.1.14一部改訂