社会医療法人財団 池友会 新小文字病院 社会医療法人財団 池友会 新小文字病院

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血管外科

治療対応疾患

末梢動脈疾患

下肢の血流が悪くなる疾患

血液は動脈と静脈に流れています。そのいずれかの血管が障害されて下肢の血流が悪くなると発症します。下肢静脈瘤は静脈が障害された疾患です。下肢の動脈が障害された疾患である下肢閉塞性動脈疾患について最新の治療法とともにご紹介致します。

下肢閉塞性動脈疾患

主に長年の生活習慣(例;喫煙)や動脈硬化因子(例;高血圧症)により下肢の動脈硬化が進行し、動脈の狭窄または閉塞を来すことで発症します(図1)。食の欧米化や高齢化社会により患者数は年々増加してます。その重症度を症状によって分類化したものがあります(表1)。特にⅢ~Ⅳ度は重症下肢虚血といい、早急に治療を行うべき重篤な状態です。
(表1)Fontaine分類
臨床所見 治療法
冷感、しびれ 生活習慣の改善と動脈硬化因子の治療
Ⅱa 200m以上の歩行でお尻、ふくらはぎが痛む 上記と薬物治療、運動療法
Ⅱb 200m以下の歩行でお尻、ふくらはぎが痛む 上記と血行再建治療
安静にしてても痛む 血行再建治療
足の潰瘍や黒色変化 血行再建治療、創傷処置

必要な検査

ABI(Ankle Brachial Index)という、上肢と下肢の血圧を比べる検査があります。下肢閉塞性動脈疾患では、下肢の血圧が上肢に比べて低値であったり、動脈硬化が強いと異常高値を示したりします。また、血管超音波検査では、動脈の狭窄や閉塞の程度を詳細に測定することができます。これらで異常を指摘された場合、CTやMRI、血管造影などの精密検査が必要になります。

治療

軽症の場合は保存的治療(生活習慣の改善、薬物治療、運動療法など)が行われます。中等症~重症の場合は血行再建治療(血管内治療や外科手術)の検討が必要となります(図2)。外科手術が第一治療法になりますが、高齢であったり手術リスクが高い方は血管内治療を検討します(図3)。
近年血管内治療で使用されるバルーンやステントが改良されて血管の狭窄を抑制する薬剤が添加されたバルーンやステントが使用可能となり治療成績が向上しております。その他にステントグラフトというステントと人工血管が組み合わさった新たな治療デバイスによって血管内治療が行える対象範囲が拡大しております(図4、図5)。しかし、重症下肢虚血の約30%の患者さんが血行再建治療を行うことが難しく、新たな治療法の確立が期待されています。
期待されている治療法の一つとして血管再生治療があります。この治療法は、血流が不足した組織に対して人工的に作成された遺伝子(例;肝細胞増殖因子)や生体で採取された細胞(例;間葉系幹細胞)を投与することで血管を発生させ血流を増加させる治療法です。国内でも臨床試験が行われ、有効性と安全性が証明されております。

下肢静脈瘤

下肢の「むくみ・つる」が最新のレーザー治療で良くなる可能性があります

下肢静脈瘤とは

下肢静脈瘤とは長年にわたり静脈に負荷がかかることで、心臓に血液を返すために重要な静脈弁(扉)が壊れてしまった病態を言います。

頻度や特徴

女性は男性に比べて2倍以上多く、下肢静脈瘤治療を受けた患者数は年々増加しています。
妊娠・出産や立ち仕事など慢性的に下肢静脈の負荷がかかる方に多く、また身内で静脈瘤がある方に多いです。

どういった症状があるのか?

下肢の瘤(こぶ)がない方でも、下肢のだるさやむくみ、鈍痛、つるといった症状をはじめ、足裏の感覚が左右で異なる、足の色が悪いなどの症状があります。特に専門科の医師でないと見落としがちなものとして、瘤が目立たない下肢のむくみや炎症を来すケースがあります。
それは皮下脂肪が厚い方や瘤を形成する前に皮下のむくみが先行するような方に多く、蜂窩織炎(ほうかしきえん)という感染症と誤診しやすいのです。
特に下腿前面の皮膚が固く変色していて、むくんでいるような方は要注意です。

必要な検査

下肢静脈エコー検査

確定診断のために必要な検査です。静脈弁が壊れていることを検出する検査です。

下肢静脈単純CT検査

造影剤を使用せず静脈瘤の形態が描出可能で治療のために必要な検査です。

手術が必要となるのは

下肢の症状を有する一次性下肢静脈瘤(伏在静脈瘤)の方。(静脈の弁自体が壊れたことが原因であるもの)
ただし、深部静脈血栓症(例:エコノミークラス症候群)や血栓形成がされやすい素因(例:悪性腫瘍、リン脂質抗体症候群)等がない方が該当します。

最新の血管内レーザー治療

2011年から保険適用となった治療法です。カテーテル治療と同様に低侵襲な治療法で短期間の入院で行えます。局所麻酔で行うことが可能でエコーを用いて血管内にレーザーファイバーを通過させ静脈瘤の元となる病変を焼灼することで根治を目指す治療法です。
以前のレーザー波長980nmと比較し、当院で使用している波長1470nmは血管壁の周囲組織にまで熱伝導が伝わることが少なく、熱傷のような痛みやしびれが少ない波長を使用しています。

下肢静脈瘤血管内レーザー治療の動画

従来のストリッピング術との成績の比較

治療後5年間での治療成績は従来のストリッピング手術と同等で約9割が治療成功例でした。
合併症に関する比較では従来のストリッピング術よりも疼痛や皮下出血などの合併症が血管内レーザー治療では少ないことが分かっています。

まとめ

  • 従来の手術に比べて低侵襲で合併症が少ない治療です。
  • 日帰り治療も可能で短期間の入院で行うことができます。
  • レーザー治療が行えない小さな静脈瘤は外来で注射剤の治療が行えます。

足の症状で困っている場合には血管外科外来へご相談ください。