社会医療法人財団 池友会 新小文字病院 社会医療法人財団 池友会 新小文字病院

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部門紹介

災害対策支援室(DMAT)

来たる『その日』に備えて牙を研ぎ続ける

災害支援対策室の概要

災害大国と言われる日本。地震、台風による災害のニュースは毎年あります。それどころか近年は増加している印象にあります。ここ門司でも風水害による被害を受けたのは記憶に新しいところです。
当院は門司区唯一の災害拠点病院であり、発災時には地域の中核医療機関として機能できるように平時から備えています。災害医療派遣チーム『DMAT』の配備や災害訓練、実災害における災害医療派遣などを以前から行ってきました。この活動をより専門的に遂行するチームとして2020年3月に災害対策支援室を発足しました。発足からの2年で下記に示すような活動を行ってまいりました。
新小文字病院では医師、看護師をはじめ現在11名の職員が日本DMAT隊員として登録されております。またDMAT隊員以外も当災害対策支援室には在籍しており2023年現在では25名程度で運営しております。
新小文字病院を、そして門司を、災害に強くすべく日々邁進していきます。

過去の実績

2011年 東日本大震災 JMAT派遣 検視活動(宮城県名取市)
2011年3月 災害拠点病院指定
2016年 熊本地震災害派遣
2020年4月 新型コロナウイルス感染症院内クラスター対策本部運営
2020年 新型コロナウイルス感染症北九州保健所対策本部運営
2020〜2023年 福岡県新型コロナウイルス感染症調整本部運営
2020年 九州豪雨災害派遣
2024年 能登半島地震災害派遣

その他厚生労働省DMAT事務局関連の研修、訓練への参加、運営多数

本邦における災害医療体制と災害拠点病院

本邦における災害医療体制の整備の教訓となっているのは1995年1月17日に発災した阪神淡路大震災であります。
淡路島北部を震源としたマグニチュード7.3の地震発生により、神戸を中心に震度7を観測し、死者6434名という戦後最悪の極めて深刻な被害をもたらしました。この災害で得られた教訓から初期医療体制の整備が検討され、広域災害・救急医療情報システムについて検討、整備がなされてきました。
その災害医療体制の一翼を担うものとして災害拠点病院が整備されてきました。災害拠点病院とは災害時に多発する重篤救急患者の救命医療を行うための高度の診療機能を有し、被災地からの受入れ機能を有するとともに、DMAT等の受入れ機能、傷病者等の 受入れ及び搬出を行う広域搬送への対応機能、DMATの派遣機能、地域の医療機関への応急用資器材の貸出し機能を有する病院です。
福岡県でも現在32施設が災害拠点病院として指定されておりますが、当院は門司区唯一の指定を受けている病院であり、局地および広域災害時の地域の医療体制の要としての機能を果たす責務を負っております。
またDMAT(Disaster Medical Assistance Team)とは「災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チーム」とされます。災害時には病院間を超えた組織的な活動を行うため、標準的な教育を受けた者がDMATとして登録されます。新小文字病院では医師、看護師をはじめ現在11名の職員が日本DMAT隊員として登録されております。

北九州における災害

近年の気象状況の変化に伴い、毎年豪雨災害が各地で起きております。福岡県内においては平成29年7月九州北部豪雨が発生し朝倉市を中心に甚大な被害をもたらしました。北九州においても大規模な災害には至っておりませんが、大雨の影響を毎年受けております。
特に門司区においては山間部も多く、ハザードマップでは土砂災害の恐れのある地域も少なくはありません。過去には昭和28年豪雨災害において門司区は甚大な被害を受けております。
また北九州には小倉東断層や福知山断層といった活断層も通っており、将来的に地震が発災する可能性も示唆されております。

災害対策支援室の発足

このような状況を踏まえ、当院ではDMAT隊員の配備、院内での災害訓練を通じて発災時の医療提供に対して備えを行なっております。また平成28年熊本地震の際には現地に当院のDMATが実災害での活動を熊本県内で行なってまいりました。その中で院内での災害対策の活動をより専門的に支援する部門の設置の必要性を議論してまいりました。そこで2020年3月にDMAT隊員を中心に「災害対策支援室」の設置を行いました。主な活動内容としては当院が被災した場合の災害対策本部運営、当院が被災していない場合の被災地支援だけでなく、平時からの職員教育によって有事に動ける職員を育て、緊急時に活動できるような物品の拡充でハード面を整え、上記全てを可能にするための書類作成を継続的に行っております。

災害対策支援室図01

現在までの活動

災害対策本部運営

  • 2020年4月 新型コロナウイルス感染症院内クラスター対策本部運営
  • 2020年 新型コロナウイルス感染症北九州保健所対策本部運営
  • 2020〜2023年 福岡県新型コロナウイルス感染症調整本部運営

被災地支援

  • 2016年 熊本地震災害派遣

4月14日~4日16日の3日間、被災地活動を行った。14日DMAT派遣要請。同日深夜に出動し、熊本赤十字病院災害対策本部に参集した。震源地に近い益城町役場の災害対策本部で本部活動と本部避難所にて診療活動を行う。本部活動後は、連絡の取れない周辺病院支援活動を行いました。

  • 熊本地震災害派遣写真01
  • 熊本地震災害派遣写真02
  • 2020年 九州豪雨災害派遣

2020年7月4日に発災した同災害に対して7月5〜7日に被災地活動を行った。
2020年7月4日発災、同日DMAT出動要請。7月5日出動、水俣総合病院病院支援、人吉・球磨地区保険医療調整本部”人吉本部”立ち上げ。
7月6日球磨村総合運動公園”さくらドーム”調査、同避難所から全員退避、球磨村孤立集落情報収集、移動式調剤薬局”モバイルファーマシー”立ち上げ。
7月7日人吉本部運営、参集DMAT采配、球磨病院支援。

  • 九州豪雨災害派遣写真01
  • 九州豪雨災害派遣写真02
  • 九州豪雨災害派遣写真03
  • 九州豪雨災害派遣写真04
  • 九州豪雨災害派遣写真05
  • 九州豪雨災害派遣写真06
  • 2024年 能登半島地震災害派遣

令和6年能登半島地震DMAT派遣報告

新小文字病院 災害対策支援室  派遣隊員:医師 冨永尚樹 看護師 成田、岡本、大木 事務 小松、武田

派遣期間:2024/1/24-30

能登半島地震でもっとも被害の大きい奥能登4地域(珠洲、輪島、能登、穴水)のうち穴水町での活動を行いました。
穴水町役場に置かれた保健医療福祉調整本部(下記注釈)で参集したDMATへ指示を出す役割となりました。
災害の超急性期ではなく亜急性期から慢性期に移行するタイミングであり、地域病院、地域医師会、地域保健所、消防救急へとDMATが行う業務を引き継いでいく段階の業務を行いました。
冨永医師は統括DMATとして穴水町保健医療福祉調整本部の本部長も拝命し活動しました。本部中核チームとして病院や避難所だけでなく行政、消防、自衛隊との調整も行いました。

https://www.beach.jp/circleboard/af09876/topic/1100216027253

本災害の本質  半島のへき地で起こった大地震!!

設定上最大震度である震度7の揺れが観測されました。
もともと能登半島には高速道路と2本の国道しか幹線道路がありません。高速道路と道路1本が現在も通行止めとなっているため、流動性が非常に悪い状態となっています。
道路と共に水道管が断裂し上下水道が広い地域で使用できません。半島である為、真ん中は山脈であり大きな道はありません。
水道の復旧は3-5月までかかるようです。
漁師町の観光地であり、震度が大きいだけでなく街並みが古いこともあり倒壊家屋が非常に多いです。
もともとお住いの人口が少ない為、傷病者の絶対数としては過去の地震と比べると大きくはありませんが、このような背景から非常に復興が難しい状態となっております。
奥能登における避難住民は地域によっては人口の30-50%にも上り、過去の災害に類をみない状況になっています。
すべては半島のへき地で大地震が起こった、ということに集約されると考えます。
1日も早い道路、水道の復旧と生活の回復が望まれます。

輪島市被災現場

穴水総合病院(穴水町の中核病院です)

穴水町保健医療福祉調整本部活動

病院支援活動(ER支援)

メディア対応(テレビ、新聞)

DMAT活動を終えて 皆さんへのメッセージ

 水道の復旧が2月から遅い地域では5月と言われていますが、道路の完全復旧や仮設住宅の設置、瓦礫の撤去、街の再興までのロードマップは今のところ見えない状態です。
現地の傷病者を支える医療従事者ももちろん被災されております。多くの方が避難先から勤務している状況です。水道が破断している為、避難所にはシャワーも水洗トイレもありません。もちろん病院にもありません。
 我々病院としては被災医療従事者への継続した息の長い支援が必要と考えます。DMATロジスティックチーム、災害支援ナース、JRAT(リハビリ)、JDADAT(栄養)などが今後も必要であると考えますので、これをお読みのみなさまにも何かしらの協力についてご一考いただけると幸いです。
 穴水総合病院は高度医療機関ではありませんが地域唯一の病院として超急性期から患者を受け入れ、入院や転院搬送を行っておられました。資源や人員に制限のある中で100床の病床を20床程度まで減らし運用しています。当院のBCPにも記載してありますが、ダメージコントロール戦略を取ることを現実的に考える必要があると考えます。

災害医療のための前提知識

  • 保健医療福祉調整本部:災害に際して各種機関が医療、福祉などの問題を解決するために横断的に集合し動くための臨時組織。初期はDMATを中心に組織化と組織間調  整をおこなう。行政、保健所、地域の中核病院・医師会、消防、自衛隊や災害時活動組織が構成員である。災害時活動組織としてはDMAT(厚労 省)、JMAT(医師会)、日赤救護班、AMAT(病院協会)、DPAT(精神科)、DHEAT(保健所)、JDAT(歯科医師会)、JRAT(リハビリ)、災害支援ナース(看護協会)など他にも多数ある。
  • 統括DMAT:特別な講習を受けた統括権限のあるDMAT医師
  • DMAT:主な任務は診療支援、搬送支援とロジスティック支援。
  • ロジスティック:通信支援、物資(ヒト、モノ)支援網の確立。多くの災害においてロジスティックがうまく回らないと事態は解決しない。
  • DMATロジスティックチーム:ロジスティックスを専門に行う。あらゆる面において本部長をサポートする。
  • BCP:business continuity planning(ビジネスコンティニュティプラン )事業継続計画。自然災害やシステム障害など危機的な状況に遭遇した時に損害を最小限に抑え、重要な業務を継続し早期復旧を図る為の企業や団体の事業計画。病院における事業とは傷病者診療、入院診療継続。
  • ダメージコントロール戦略:応急処置などを施し、なんとか活動を継続するための戦略。根治を目指し、活動が継続できなくなることを避けるための一時的方略。

日々の活動

災害教育

  • 平成28年7月 多数傷病者搬送訓練
  • 平成30年9月 院内トリアージ救護訓練
  • 平成30年12月 災害対策支援室「災害時とは」
  • 令和1年10月 災害対策支援室「災害時にまずするべきこと」
  • 令和2年9月 災害対策本部立ち上げ訓練
  • 令和3年11月 エマルゴ訓練
  • 令和4年11月 災害対策本部立ち上げ訓練
  • 令和5年2月 クロノロ訓練

災害対策支援室の活動として、災害時の活動だけではなく平常時から職員に向けての災害訓練や講義を行っています。
コロナ禍以前は、当院スタッフや看護学生を交えた多数傷病者訓練や当院全職員を対象とした災害対策支援室主催の災害講義を実施していました。コロナ禍では大人数での災害訓練が実施できない為、院内管理者への発災時災害本部立ち上げ訓練や医療技術部スタッフや看護師、事務職員対象の災害時対応講義などを回数を分けてを実施しています。
当院では災害対策委員を発足し、すべての部署より災害委員を人選し毎月災害についての勉強会、また災害対策支援室での活報報告を行っています。各部署の災害委員が、自部署へ伝達・講義を行い院内全体で災害に対しての知識向上の為、日々努力しています。

令和4年度 災害本部立ち上げ訓練

災害本部立ち上げ訓練写真

令和3年度 エマルゴ訓練

エマルゴ訓練写真
エマルゴ訓練とは救急・災害医療の机上シミュレーションによる研修です。災害を想定し、医療従事者や傷病者に見立てた人形を動かし、決められた時間内で多数傷病者の受け入れを行っているところです。

院内活動

発災時に各部署のスタッフが速やかに行動・対応できるようにアクションカードを作成し各部署へ配布・周知を行いました。またBCP(事業継続計画)作成を行いながら、既存の災害マニュアル改定を行いました。こういった平常時の院内システム構築も災害対策支援室が関わっています。

BCP作成

災害対策支援室図02 BCPとBCMの関係(イメージ)

災害時アクションカード作成

災害時アクションカード作成

災害対策マニュアル改訂

災害訓練実施後の反省点など踏まえて作成した災害対策マニュアルを随時更新しています。

火災時アクションカード作成

病院火災は凄惨な結果を招きかねません。2022年に火災時の初期行動を簡略にまとめたアクションカードを作成し、院内全消火栓の近くに掲示するようにしました。

火災時アクションカード作成01
  • 火災時アクションカード作成02
  • 火災時アクションカード作成03

DMAT教育

定期的に開催される日本DMAT技能維持訓練や大規模災害時政府訓練などに積極的に参加することで、発災時にはDMAT隊員は迅速に活動できるように日頃より訓練参加や技術向上に務めています。

令和4年度 大規模災害政府訓練

  • 大規模災害政府訓練写真01
  • 大規模災害政府訓練写真02
  • 大規模災害政府訓練写真03

活動拠点本部で本部活動を行いました。画像はロジスティックス(調整員)として活動しているところです。

令和4年度 九州・沖縄

九州・沖縄写真
活動拠点本部で待機中にEMIS(広域災害救急医療情報システム)の入力をしているところです。

その他

外部開催災害勉強会

外部の病院が開催した災害の訓練報告や勉強会にオンラインで参加させて頂き、他施設との情報共有をさせていただきました。

当院資機材紹介

  • 資機材写真01
  • 資機材写真02
  • 資機材写真03
室長挨拶写真

室長挨拶

災害対策支援室室長 冨永(救急科部長)
みなさまこんにちは。新小文字病院災害対策支援室室長の冨永です。私は普段は救急医療を軸に循環器内科的な技術を用いて、救急、集中治療、麻酔、心カテから一般内科まで行っております。はじめに麻酔科を2年学んで現在は救急専門医、循環器専門医、麻酔科標榜医、内科認定医、病院総合診療認定医とともに日本DMAT隊員、統括DMATとして活動しております。
色々なことを学んでまいりましたが、やはり救急医療が医療の根幹であるという気持ちは年々増すばかりです。
医療技術は科学技術の進歩とともに進歩していく一方ですが、災害というのはこの前提となるものが全て手に入らない状況なのです。いくら心臓カテーテル技術を持っていても電気が来なければ治療はできません。集中治療を施そうにも薬剤が枯渇すればそれも叶いません。
そういう意味では災害医療は救急医療すらも超える医療の原点であると考えています。資源や機械がない時にいかに診察できるかということは医療の本質に迫るのではないかと考えています。
災害時にいかに普段と極力変わらない医療が提供できるか、もしくはどこから資源をどう削って持ってくるか、そういうことを普段から考える必要があります。日本は災害大国です。日本に住んでいる限りどこにいても地震の被害に遭う可能性はあります。また昨今の異常気象により風水害の件数は確実に増えております。そのような時に地域の、あるいは日本の頼りになる病院になれるように災害対策支援室を自ら発足し自ら室長につきました(笑)。今後とも邁進してまいりますのでよろしくご支援お願いいたします。当支援室はいつでもメンバー募集中です!!

副室長挨拶

薬剤科 辻本 朗 
薬剤科の辻本朗と申します。
私は薬剤師として勤めておりますが、DMATでは業務調整員として医師、看護師が迅速な医療提供が行えるよう様々な業務を担当しております。私はまだ災害医療に関しては経験は浅いですが、今までに新型コロナウイルス感染症に対して福岡県の医療調整本部での活動や、令和2年7月豪雨で活動を行ってまいりました。活動の中で感じることは平時から災害に対する準備と訓練の重要性です。業務調整員の心構えとして機敏、機転、気配り、この3点に留意するように指導を受けます。この3点を院内での活動でも忘れずに、災害に対する知識や備えが高まるように活動を続けていきたいと思います。
看護部 成田 剛
こんにちは、看護部の成田剛です。
普段は救急外来の看護師として働いています。主に救急搬送患者の対応をしていますが、通常の外来業務、カテーテル治療の介助、院内急変時での応援・対応なども行っています。当初は院内の日本DMAT隊員は2名しかおらず、災害に対しての活動も難しい状況でした。しかし、冨永先生や辻本係長など災害に対する活動を共にしてくれる有志の皆さんのおかげで、現在の災害支援室として活動させて頂いています。災害に関した活動において最も大切なことは、知識や技術はもちろんのことですが、「災害に対して少しでも意識を向ける」ことだと思っています。災害対策支援室の活動を通して、当院スタッフや周りの方々にも災害への意識を向けて頂けるようお手伝いができたらなと思い日々活動しています。