社会医療法人財団 池友会 新小文字病院 社会医療法人財団 池友会 新小文字病院

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脊髄脊椎外科(脊髄脊椎外科治療センター)

脊椎靭帯骨化症(せきついじんたいこっかしょう)

後縦靭帯骨化症(こうじゅうじんたいこっかしょう)

後縦靭帯骨化症とは、椎体の後縁を上下に連結し、脊柱を縦走する後縦靭帯が骨のように硬くなって、大きくなり、その結果、脊柱管が狭くなり、脊髄が圧迫されて手足の麻痺などの神経障害を引き起こす病気です。骨化する脊椎のレベルによってそれぞれ頚椎後縦靭帯骨化症、胸椎後縦靭帯骨化症と呼ばれます。ここでは圧倒的に多い頚椎後縦靱帯骨化症について記載します。
頚椎後縦靭帯骨化症は日本国内の調査では平均3%の人に、この病気が発見されます。男女比では2:1と男性に多く、発症年齢はほとんど40歳以上です。 明らかな原因は不明です。この病気の特徴として、家族内発症があるということ、性ホルモンの異常が存在すること、糖尿病の合併が多いこと、狭心症などの動脈硬化が合併することが多いこと、骨化部位における局所ストレスで神経症状が増悪すること、などがあります。後縦靭帯骨化症は黄色靱帯骨化症(おうしょくじんたいこっかしょう)、前縦靱帯骨化症(ぜんじゅうじんたいこっかしょう)を合併しやすく、骨化部位は縦方向や横方向に増大、伸展していきます。しかし、骨化があればすぐに症状が出現するわけではありませんが、また軽微な外力で四肢麻痺になることがありますので、その存在を知っておく必要があります。

症状

頚椎にこの病気が起こると、最初にでてくる症状として首筋や肩胛骨周辺に痛みやしびれ、また特に手の指先にしびれを感じたりします。次第に上肢の痛みやしびれの範囲が拡がり、下肢のしびれや知覚障害、足が思うように動かない等の運動障害、両手の細かい作業が困難となる手指の運動障害などが出現してきます。重症になると排尿や排便の障害やひとりでの日常生活が困難となる状態にもなります。これらの症状は年単位の長い経過をたどり、良くなったり悪くなったりしながら次第に神経障害が強くなってきます。慢性進行性のかたちをとるものが多いようですが、中には軽い外傷、たとえば転倒して、突然手足が動かなくなってしまうこともあります。

治療

保存的治療

鎮痛剤、血流改善剤などの薬物療法が基本です。しかし、後縦靱帯骨化症は先に記載したように、進行性に悪化する可能性のある疾患です。症状は緩徐に進行する場合もありますが、ある時期を過ぎると急速に進行して、麻痺を起こす可能性があります。定期的な受診が重要です。保存的治療で非常に重要な点は牽引治療は禁忌であることです。私たちの施設にも牽引後、急速に四肢麻痺が進行し、救急搬送されてくる患者があとを絶ちません。

外科的治療

後方除圧手術

全体的に脊椎を圧迫した頸椎後縦靱帯骨化症
後方法の利点としては頚椎後縦靱帯骨化症に対して全体的な脊髄の除圧を行うことが可能であり、危険性がほとんどありません。非常に安全な方法といえます(当然、施設による差は大きいと思いますが)。しかし、脊柱管外側に大きく張り出した後縦靱帯骨化巣では、後方除圧で脊髄のねじれのために新たな麻痺が起こる可能性が指摘されているため、前方法の適応となります。

前方除圧手術

一側に偏在した頸椎後縦靱帯骨化症
前方法の最大の利点は前方から圧迫する後縦靱帯骨化巣をほぼ完全に摘出することが可能な点です。しかし、手術合併症が多く、多椎間(3椎間以上)例には適応がないと考えています。

各施設で異なりますが、私たちは、1~2椎間に限局しているか、もしくは一側に偏在した後縦靱帯骨化症例に対しては前方法を選択し、それ以外は後方法を選択しています。

胸椎黄色靭帯骨化症(きょうついおうしょくじんたいこっかしょう)

黄色靱帯骨化症とは後縦靭帯骨化症と同様に靭帯が骨のように硬くなり、そして肥大して脊髄を圧迫する病気です。後方にある椎弓の間を連結している黄色靱帯が骨化してきます。 病気の原因は不明ですが、後縦靭帯骨化症と合併しやすい事実があります。後縦靭帯骨化症が頚椎に多いのと異なり、胸椎に多発します。特に胸椎の下位に起こりやすく、黄色靭帯にかかる負担が発生の原因かもしれません。

症状

全く症状をおこさない方もいます。また徐々にですが、下肢症状が悪化する方もいます。初発症状として下肢の脱力やこわばり、しびれまた腰背部痛や下肢痛が出現してきます。痛みがない場合もあります。数百メートル歩くと少し休むといった間歇性跛行をきたすこともあるので、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)と診断されていることもあります。重症になると足がつっぱって歩くことが困難となったり、足が麻痺して歩けなくなってしまいます。

治療

神経が圧迫されて症状が出現した場合に治療の対象になります。種々の治療法を組み合わせて経過を見ますが、神経症状の強い場合は手術を行います。この場合、顕微鏡を見ながら、骨化巣を切除して神経の圧迫を取り除きます。神経を包んでいる硬膜に強く癒着していることもありますし、硬膜そのものが骨化していることもあります。しかし、胸椎黄色靭帯骨化症は手術後に下肢の症状は非常に改善することが多い疾患です。

▼〈頚椎症性脊髄症〉の主な手術について詳しくはこちらをご確認ください