社会医療法人財団 池友会 新小文字病院 社会医療法人財団 池友会 新小文字病院

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脊髄脊椎外科(脊髄脊椎外科治療センター)

脊髄・脊椎の外傷(胸・腰椎)

骨粗鬆症について

骨の量が減って骨が弱くなり、骨折しすくなる病気です。日本では、約1,000万人の患者がいるといわれており、高齢者人口の増加に伴ってその数は増える傾向にあります。骨は皮質骨(骨の皮の部分)と海綿骨(骨の中身の部分)から形成されています。海綿骨はたくさんの支柱で形成されていますが、下の図のようにこの支柱が少なくなった状態が骨粗鬆症です。

骨粗鬆症は大きくふたつに分かれます。

1. 原発性骨粗鬆症
閉経(月経がなくなること)や加齢(歳をとること)にいろいろな原因が重なっておこる、最も多くみられる骨粗鬆症です。

2. 続発性骨粗鬆症
特定の病気や薬剤によっておこる骨粗鬆症です。
骨粗鬆症になると、ちょっとした外力(しりもち、転倒など)で手首の骨や足の付け根の骨の骨折を起こします。脊髄脊椎外科治療センターでは背骨の骨折の治療を中心に行っていますので、腰痛などの原因になる骨粗鬆症による背骨の骨折の患者がたくさん訪れます。
特に原発性骨粗鬆症の特徴は、女性に多く、特に60歳代の女性に半数、70歳代の女性の6割以上が骨粗鬆症で骨折しやすい状態になっています。これは、女性はもともと男性より骨量が少ないのに加えて、閉経後、ホルモンなどの関係で急速に骨量が減少するからです。寝たきりの原因の第1位が脳卒中、第2位が老衰、そして第3位が骨粗鬆症であることから、高齢化社会が抱える重要な問題としてクローズアップされています。

背骨の骨折は軽度の「変形」から明らかな「骨折」まで、いろいろな段階がみられます。激しい痛みで動けなくなってしまうこともありますが、痛みのないこともあります。しかし、安静にして寝てばかりいると筋力が低下し、骨もさらに弱くなってしまう恐れがあり、通常コルセットで腰を固定し、座る・立つ・歩くというリハビリテーションが重要になります。一般的に安定性の圧迫骨折であれは激しい腰痛は数日で改善します。
このように、骨粗鬆症にともなう骨折は多くの場合、保存的治療で治ってしまいます。骨折したことに気づかずに自然に痛みがなくなることもあります。しかし中には背骨が進行性潰れてきたり、なかには偽関節(骨折部がくっつかずにいつまでもグラグラした状態)となり、いつまでも腰痛や潰れた骨が脊髄を圧迫して足の麻痺が出現して歩行できなくなることがあります。圧迫骨折後の慢性の腰痛で来院される患者のなかに、このような不安定な骨折の患者がたくさんいます。圧迫骨折を起こすと必ず背中が丸くなります。しかし、これまで健康で活動していた方は背中が丸くなることが恥ずかしいと感じることが多く、寝るときは背筋を伸ばそうとして、仰向けで寝ているようです。しかし、立っているときは痛みのために背中をかがめて歩きます。この背筋の姿勢のギャップがいつまでも骨折が治らず、偽関節形成を起こしてしまいます。こうなってしまうと、手術治療を選択せざるを得ません。

症例

圧迫骨折の治療を保存的に行われていましたが、2ヶ月たっても、腰椎が改善せず、足のしびれがではじめて歩行困難になり、当院に訪れた、75歳の女性の患者の写真です。立った状態で撮影したレントゲン写真では、くの字(逆の「く」ですが)に背骨が曲がっていますが、仰向けに寝た状態で撮影したレントゲン写真ではまっすぐになります。圧迫骨折をおこした背骨がワニの口のように、閉じたり、開いたりしています。これが背骨の偽関節です。これをCTでみてみますと、折れた骨の中に空気がはいって、さらに脊髄を圧迫しているのがわかります。

脊椎不安定性骨折(せきついふあんていせいこっせつ)

背骨の骨折には安定性の骨折と不安定性の骨折に大きく分かれます。安定性の骨折は受傷早期にギプス固定やコルセットでの治療で治癒します。しかし、不安定性の骨折では長期の安静や固定が必要であり、その間に身体の筋肉や心臓や肺の機能が弱ってしまい、生命の危険にさらされることもあります。
背骨の骨折とはレントゲン写真では受傷早期にはわかりにくいのですが、MRIを撮影することで容易に判断できます。レントゲン写真では早期に判断できなくても、MRIでは骨折を見逃すことはありません。

不安定性骨折の判断は以下の方法で診断します。背骨を横から見て三等分します(A:前方要素、B:中央要素、C:後方要素)。この三等分のうち、ひとつの部分だけの骨折であれば安定性の脊椎骨折と判断して、コルセットなどで治療します。しかし、二つ以上の部分の骨折であれば不安定性骨折と診断されます。
不安定性骨折の場合、全身状態を考慮して、手術治療法を選択します。全身状態が不良の場合は保存的治療を選択せざるをえないこともあります。しかし、この場合、長期間の入院、ギプス固定が必要であったり、歩行障害の進行のため、日常生活が困難になることがあります。しかし、骨粗鬆症などで圧迫骨折が進行性に悪化することもあります。当初は治療が容易であった圧迫骨折が、脊柱管内に骨片が入り込んでしまって、大きな侵襲が必要な治療を選択しないといけないようなこともあります。

症例

時の圧迫骨折(不安定圧迫骨折なのですが)に対して、年齢を考慮してコルセットで加療されていましたが、3ヶ月後には圧迫骨折がさらに進行して脊髄を押さえ込むようになり、腰痛ばかりでなく、脊髄神経を圧迫して、足の麻痺のために歩行困難になっていました。この場所の手術は大手術となりますので、この進行を食い止めることができるため私たちは積極的にこのような不安定性骨折に対して外科的治療を選択します。

受傷機転は転倒・転落事故が多いのですが、骨粗鬆症がある場合は、しりもちのような軽微な受傷機転でもおこることがありますし、なんの外傷もない場合もあります。
中には高所からの転落事故で受傷直後から脊椎が骨折して、脊髄や馬尾神経を強く障害することもあります。下の写真は5階から転落し、第12胸椎の脱臼粉砕骨折です。CTでは椎体が電球のようにばらばらになり、骨片が神経管内に入り込んでいるのがわかります。また、3D-CTでは脊椎の状態が明瞭にとらえることができます。

▼〈脊髄・脊椎の外傷〉(胸・腰椎)の主な手術について詳しくはこちらをご確認ください